所在:千曲市千本柳
民話昔、ある所に、黒彦の命と白彦の命がおりました。2人はいとこで、年も同じ、住む屋敷も近くでしたので、まるで兄弟のように、2人は仲睦まじく暮らしていました。
年月が過ぎ、黒彦は狩りや漁が得意でした。白彦は書や歌に秀でて、笛などもたしなむようになりました。それぞれの道は違っても、一層、親しみ合う仲になりました。
ところが、2人が17才の春、美しい桜姫に、2人とも心が奪われるようになり、急に、いがみ合ってしまいました。2人は姫を妻にしょうと競い合って、2人で桜姫に求婚に行きました。桜姫は「私には、もはや、いいかわした命がいます」と言って,去ってしまいました。その後ろ姿を見送り、2人はただ顔を見合わせるばかりでした。白彦は、その夜「桜姫が他の命の妻になった。この世に未練はない」と書きおきして、自害してしまいました。黒彦は、白彦の死を見て、本当に、桜姫を愛したのは白彦だと悟り、この上は霊場巡りをして、白彦の霊を慰めようと、旅に出ました。黒彦は国々を回った後、信濃国五加に入り、千本柳を見て、「柳の木は白彦が好きな木だった。私はここで白彦のように書や歌をたしなみ、ここに骨をうずめる。」と、千本柳のそばに庵を建てて、住みつきました。
黒彦神社は、そんな黒彦の徳を慕って、里びと達が祀った社だそうです。
黒彦神社文禄の頃(1594年)、千本柳村が卒塔婆柳とか、外輪柳と呼んだ地籍に諏訪社がありました。その後、いくつかの洪水があって移転が続きました。明治になって、永久安泰な諏訪社の鎮座を求めた矢先、明治4年(1871)の政令(神社の社格を決める)があって、明治8年(1875)社号許可されました。伊勢社のあった現在地に、三神 天照皇大神・ 倭伊波礼彦命 ・建御名方神を合祀して、黒彦村の村社「黒彦神社」が成立しました。
・参考文献 更級・埴科の民話・要約(浅川かよ子)、戸倉史談会「とぐら」34号