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ちくま大百科

【生活・行事・民俗】矢崎山の福次郎

所在:千曲市八幡 郡

矢崎山の赤狐 福次郎郡沖田んぼや峯下田んぼ、建前帰りの大工さん・婚礼帰りの若者が夕闇迫る畦道で、夕日を背に行ったり来たりの千鳥足。正気の人が何かと見れば道端藁のにおい、太い尻尾の赤狐です。パタンと尻尾を右にすれば、田園の畦道をぴょんぴょんと飛び跳ね、左にたたけば、また跳んで、それが何回となく続くやら。着ていた紋付羽織は泥だらけ、頂戴してきたご馳走も何処いったやら、すっかりなくして、「おーいどうだや?」と声をかければきょとんとした顔で「また福次郎狐にやられてしまったか!」と正気づき「俺は少々酔ったのかなー」と慌てて持ち物探し川の中。
かっこを見れば、足袋はだしはいていた下駄か、草履は何処へやら、泣くに泣けない昭和初期の話とか。「福次郎狐の又従弟峰の祠の三次狐」は悪さにかけては天下一品でこの里のみんなが泣かされました。この地の狐達ははみんな同じ一族で他に「おちょぼ三本足の白狐は壇の原の檀十郎」「お米川の女郎狐お米さん」「湯の崎のさねんじ狐」等がおり、時々人間とのかかわりの物語を演じていたということです。

又こんな話もあります。
善光寺へお参りに行き、姨捨駅で降りた、ほろ酔い加減のお父さん、自宅へ帰ろうと八幡田んぼを急いでいでいると若いきれいな女が手招き、誘われるままに、ついふらふらと良い機嫌で与太話。
やがて、「お風呂があるので入りましょう」と優しく誘われてれて、一緒に入る風呂の中。ほろ酔い加減のいい気持で歌の一つも歌っていると、----
父さんの帰りが遅いと子供や母ちゃん、家族総出で 「おーい父さん!ーー」 探しまくって田んぼ道、道のわきの肥溜めで気持ちよさそうに歌の声、臭いの・汚いの我慢して「あんたどうしたの?」と声かけりゃ、はっと我に返るおとおさん「ありゃりゃ俺はどうしたんだ?」近くの藪で「コンコーン」福次郎狐の声響く。

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