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ちくま大百科

【生活・行事・民俗】悲恋お仙伝説

所在:麻績村 猿が番場峠

麻績方面から猿ヶ番場峠への細い険しい道を上り、もう少しで峠あたり、弘法清水と呼ばれる冷たい美味しい水の湧き出でる泉が有り、その岸辺に小さな茶屋が有りました。

茶屋は美しい看板娘の名から「お仙の茶屋」と呼ばれ、 お仙の気立ての良さから、峠道を行き来する旅人からはもちろん、村の若い衆にも好かれ「お仙の茶屋」はいつも明るい笑い声に沸いていました。

村の若い衆は一日一回はお仙に会わなきゃ畑仕事も、田仕事も何もできないありさまでした。

もうすぐ寒い信州の冬迎えるという秋のある日、お仙は峠で腹痛に苦しむ旅の武士を見つけ、この武士をお茶屋へと運びこみ、手厚い看護をいたしました。やがてお仙の心を籠めた世話を受ける内、武士とお仙との間には、ほのかな恋心が芽生え、二人は想いを交わす仲となって行きました。武士が京での仕事の為、出発の時別れを惜しむお仙に、武士は約束しました。

「京での務めを無事終えて、来年の今日、必ずここへ戻ってきます 」と----

ところが、仕事を終え,恋しいお仙のもとへ土産のかんざしを胸に急ぐ帰り旅の途中、木曽の街道筋の野党に武士は殺されてしまったのです。お仙はそんな事は、知る由もありません。

恋しい武士との約束の日、お仙は朝から、今か、今かと待ち続けました。お天道様が頭上に来てお昼になっても、日が落ちて夜になっても武士の姿は見えません。

やがて夜も更けて、茶屋の前に立ちつくすお仙の前に、青白い顔をした懐かしい武士が亡霊となって突然現れました。武士は木曽路での惨事をお仙に告げ、京からの土産のかんざしを手渡すと、スーと影のように消えてしまいました。お仙は気ちがいのように、雪の峠道を探し回りましたが、武士の姿はそれっきり現れることは有りませんでした。

次の朝、村人たちは、峠の六地蔵の前で冷たくなったお仙を見つけました。そのお仙の胸には、恋しい武士からのかんざしがしっかりと抱かれていました。

※この池は本文の、弘法清水ともっと上の今の聖湖当たりの2説があります。
この伝説に因んだ「番場節」があり、中原にその保存会があります。

弘法清水

弘法清水

お仙の茶屋跡

お仙の茶屋跡

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